不思議の国 中国

中国を旅する機会を得、吃驚な体験をした。上海から内陸に入った武漢市で、アルツハイマー病の国際学会があり、参加してきた。中国でも高齢者が増え、アルツハイマー病が注目されるようになっている。

で、何が吃驚かというと、新旧文化の劇的なミスマッチと表現できようか。例えば、北京の主要道路は片側三車線以上の立派な道で、両側には日本のバブル期を彷彿させるような超モダンな高層ビルが建ち並び、日本人よりずっと身綺麗な若者が携帯電話を片手に闊歩している。ところが、この表通りから50 mも入ると、昔ながらの家並みと生活が、そこにあった。狭い道路を、練炭を山積みした大八車や、野菜を積んで売り歩くリヤカーが通り、その奥には人がやっとすれ違えるくらいの路地が入り組んで、びっしりと古い家並みがある。この家の壁は煉瓦製、屋根は瓦なので、100年以上は続いているだろうという貫禄のある家並みだ。小さな家ばかりで、トイレは道路のあちこちにある公衆トイレを使うのか。まさに戦前の日本(いやもっと古い?)を偲ばせる光景だった。日本以上に近代的な表通りと、清の時代からこんな家並みだったのだろうと思わせる裏通りが、たった徒歩1分の距離で共存していることがとても不思議に思えた。

どうしてこんなことが起こるのか?と、考えてみた。一つは、石と土の壁だろう。日本のように木造家屋ではないので、火事で消滅することもなく、古い建物がそのままずっと残っている。2年前にインドネシアの奥地を訪ねたことがある。電気もガスもなく、人々は昔ながらの生活をしていたが、家屋は木造で、10~20年で作り替えるため、あまり歴史は感じなかった。もう一つは急速に進む近代化であろう。武漢の学会場となったホテルは、日本の高級ホテルと殆ど変わらず、プレゼンテーションもパソコンを液晶プロジェクターに繋いでというモダンな方式が主流だった。ところが、ホテルから一歩外に出ると、バイクを改造したような3輪タクシーがトコトコと走り、天秤棒を担いだ物売りが通っている。この街角で、飲茶をみつけ、道端で蒸かしている小籠包を食べたら1皿15円(日本円換算)、これと同じものを北京の街の飲茶店で食べたら75円、空港の国際線ロビーのレストランで食べたら750円、この値段の格差にも驚いた。ちなみに、学会長の弟子で、学会期間中の世話をしてくれた大学院生に中国のサラリーを尋ねたところ、この学生の出身地では、父親の医師が月給45,000円(日本円換算)、母親の看護婦が25,000円とのこと。田舎町では日本の1/10位の収入らしい。

これまで、欧米各地の学会に出席し、米国には10か月留学、オランダには客員教授として計4か月ほど滞在し、インドネシアやマレーシアなどにも出かけたが、今回の旅ほど写真を撮りたいとそそられたことはない。こんな不思議な場所が日本の近くに残っていたとは。まさに不思議の国、中国。強い衝撃を受けた一週間の旅だった。

こだわりの一枚の写真は、生活感溢れる裏通りの光景ではなく水辺の情景を選んだ。裏通りのインパクトを写真で表すのは不可能と感じたからだ。裏通りの光景は、ぜひ皆さんの肉眼で見ていただきたい。

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